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【 Vol.2 】遣唐使由来説に迫る

加藤博士の遣唐使由来説をもとに大陸へ=吉村氏

 犬塚 それから、吉村さんは旧上五島町の教育長を務めていた当時、実際に中国を訪れて、うどんの現地調査を行われましたね・・・


 吉村氏 それは平成13年11月のことなんですが、加藤博士の「五島うどんの遣唐使由来説」をひとつのきっかけにして、五島うどんと日本の食文化のルーツを求めるために中国大陸に渡りました。日本のうどんの、いわば本家調査です。
 一口にうどんと言っても、中国に伝わる麺の種類は400種類ともいわれていて、当初、五島うどんのルーツを捜し当てるのは至難の業だと、誰もが思いました。

 犬塚 日本とは全然、スケールが違いますからね。

 吉村氏 五島うどんは乾麺で、手延べの製法であることから、まず、これに類似する麺がないかと文献をあたったところ、「索麺〈さくめん〉」と呼ばれる乾麺があることを突き止めた。
 すぐに長崎市の中国領事館を訪ねて、時の張煥忠〈ちょう・かんちゅう〉総領事に調査協力を依頼したところ、本国政府から、浙江〈せっこう〉省温州〈おんしゅう〉市の永嘉〈えいか〉県に「岩坦索麺〈がんたんさくめん〉」というものがある、という情報が寄せられました。
 ちなみに、中国の自治区分は、「省」が日本の「県」、「市」は「市」、「県」は「町」に該当します。
 当時を振り返ると、私自身、何か目に見えない、大きな力に導かれているような不思議な感覚がありました。

 犬塚 その中国に行かれて、実際はどうだったんでしょうか。


製造現場で五島うどんのルーツと直感=吉村氏

 吉村氏 永嘉県の岩坦鎮(村)に入り、「岩坦索麺」についての調査を始めると、「この索麺こそが五島うどんのルーツだ」と直感する製造現場を目の当たりにしたんですよ。

 岩坦索麺の製造工程と五島手延うどんのそれとが、ほぼ同じだったんですね。生地をこねるところ、寝かせて熟成させるところ、平らにして鎌でカッティングするところ、棒を挿し、縄状にした麺を算用数字の8の字にかけて細く伸ばしていくところ、天日干しをして乾燥させるところ。それに、うどん作りに用いる道具類まで・・・

 そのとき、これは単なる偶然ではない、と思いました。
 索麺は中国語で「そうめぇん」と発音します。麺の太さが五島うどんよりも細い日本の素麺(そうめん)の呼称の由来になっていますね。


 犬塚 お話をうかがっていて、中国と日本で同じ製造技術が別々に発生したとはとても考えにくいなぁ。もちろん、偶然の一致なんかでもないでしょう。
 吉村さんが実施した調査・研究の結果は、われわれ製麺業界にとって、世紀の大発見ではないかと思っています。


(つづく)→【 Vol.3 】小さな島の大きな奇跡